従来は速記文字や速記記号といった速記の際に使われる特殊な符号を、言葉や文字に戻すことを指していました。ICレコーダーなど録音機器が普及した現在では、主に講演やインタビューなどの録音データを文字起こしすることを指すようになりました。
反訳(はんやく)とはもともと、速記文字を普通の言葉に置き換えることを指します。速記とは人の発言や会話を特殊な速記文字でその場で紙に記録していくことす。速記文字は、ぱっと見には全く意味不明の記号なので、速記文字を普通の言葉に直す作業は外国語の翻訳に近いとも言え、「訳」という字が使われるゆえんです。日本では明治時代、帝国議会の設置などにより公的な発言を記録、または報道する必要性やニーズが生まれたことで速記記号が編み出され、その後急速に発展しました。帝国議会での速記はその後、現憲法下の国会でも引き継がれ、衆議院、参議院ともに速記者の養成も行っていましたが、録音機器の機能向上などにより速記記録は活躍の場が徐々に狭くなり、2006年には両院ともに速記者の養成を中止しました。
現在では国会に限らず、会議などはICレコーダーなどの機器を使って録音し、その音声を文字起こしして議事録を作成するのが一般的です。ですから今の時代で「反訳」といえば、文字起こし・テープ起こしのことになります。「東京反訳」という社名も、文字起こしの会社であることを直接的に表しています。
「反訳」という言葉をつかうものとして「裁判用反訳書」というものがあります。刑事、民事にかかわらず裁判所に証拠資料として提出する音声記録は文字起こしして文書でも提出することが求められますが、その文書のことを「裁判用反訳書」といいます。大変重要な書類で、内容に誤りがあると証拠として採用されなくなる可能性があります。反訳書は誰でも作成可能ですが、通常は専門の「反訳」業者に作成を依頼します。