会社のパワハラ対応
~事実と認識の違いを引き出す面談マニュアル2~

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前回はヒアリングシートを使用したヒアリングの具体的な方法についてお伝えしましたが、今回は、被害者、加害者それぞれとの面談における注意点についてご説明したいと思います。

ヒアリングについては被害者からのみならず、できれば第三者、加害者からも行います。この際は、必ず被害者から許可をとってください。ヒアリングにおける共通の注意点としては、相談したことや面談時に話したことによって不利益な取り扱いはしないこと、及び相談の秘密は守ること、を約束することです。ハラスメント調査における事実の確認方法は基本的には同じですが、相手によって若干注意点が異なる部分があります。

1.被害者との面談での注意点

(1) 最初に伝えること

・感謝と共感
まずは相談してくれたことへの感謝と、つらい想いを抱えていることへの共感を示しましょう。被害者は相当な勇気をもって連絡していることが予想されます。その思いをまずは理解することが必要です。

とはいっても、気を付けたいのは「共感」と「同意」は異なるということです。共感とは「あなたはそのように考え、感じたのですね」という、相手の思考プロセスを理解するということです。例えば「バカ」と言われて怒っている場合に、自分も一緒に怒る、というようなことではなく、この方はこの場面でこのように怒りを感じたんだな、ということを理解するということです。(これを口に出して伝えるということではなく、ヒアリング担当者の聴くスタンスのことです)

・パワハラ調査の認定は別のプロセスで行う、ということを伝える
被害者は「これってパワハラですよね?」と判断を求めてくることがよくあります。人は認められたい生き物です。「パワハラだ」と認めてもらいたいという期待値をもって相談してくることが往々にしてあります(これそのものは悪いことではありません)。ですから、今回は事実の確認であり、パワハラかどうかの認定は別のプロセスで行いますよ、ということを理解しておいていただく必要があります。

・体調の確認
体調不良や病院受診の有無をしていないかどうかを確認します。もし身体に影響が出ているようであれば専門医との連携をとる必要があるからです。事前に勤務表を確認しておくとよいでしょう。メンタル不調が発生している場合は勤務表に兆候が出る場合があります。

(2) ヒアリングの注意点

基本はロールプレイング式ヒアリング法で事実の確認を行っていきます。 しかし、被害者は感情が高ぶってしまい、感情に終始してしまうことがあります。そのような場合はまずは被害者の気持ちを先に聴きましょう。また、「話せる範囲で」とお伝えしてくのもよいでしょう。その場面を思い出すと具合が悪くなってしまう、話ができなくなってしまうようなことも考えられるからです。

(3) 面談終了時

一通り事実の確認を行ったら、希望する今後の措置を確認します。例えば配置転換をしてほしい、相手に謝ってほしい、気持ちを聴いてほしいだけ、というような具合です。そして、あらためて相談してくれたことに感謝の意を伝えて終了します。できれば、次回同じようなことが起きた場合には録音をとっておくことをお勧めしておきましょう。録音があれば、客観的な証拠として第三者にも状況が判断しやすくなります。

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2.加害者との面談での注意点

(1) 面談前にやっておくこと(心構えをつくる)

加害者のよいところを10個、書き出しておきましょう。これは相談担当者の先入観をなくすためです。パワハラの通報を受けると、どうしても加害者と呼ばれる人に対して「パワハラを行った人」というようなマイナス感情を持ってしまいがちだからです。ヒアリングする側にマイナス感情があると、事実の引き出しが難しくなります

(2) 面談時に最初に伝えること

最初に面談の趣旨として、あくまで事実の確認であり、「まだ、あなたをパワハラ加害者と決めつけているわけではない」ということを伝えましょう。加害者とされる人は呼び出しを受けて戸惑っていることも多いです。なぜなら、本人には「パワハラ」という自覚がなく、むしろ正義のつもりで指導している、ということもあるからです。ですから、「なぜ自分が」という不安を取り除くことが大切です。そうでないとヒアリングにおいても正しい情報を引き出すことが難しくなります。また、ヒアリングの時点では被害者の言葉だけが正しいとも限りません。加害者に恨みを持つ人が意図的に嘘の報告をしている可能性もあります。

(3) ヒアリングの注意点

被害者との面談で聞き取った場面と同じ場面について、加害者から話を聴きます。同じ場面でも異なる結果になることがあります。そのことが認識の相違、価値観のずれ、の部分です。それを明らかにすることが大事です。

(4) 面談終了時

ヒアリングが一通り終わったら、その場面における、加害者の側の「よいところ」「よき意図」を探しましょう。といっても、温情をかけるためではありません。では何故そんなことをするのでしょうか?それは「人を裁かず行為のみを裁く」。それによって「再発防止」と「よりよい組織づくり」につなげるためです。

行われた言動がパワハラと認定された場合は適切な処分を行わなければなりませんし、時には厳しい懲戒処分が必要となることもあるでしょう。しかしもし、あなたがよかれと思って行った言動がただ一方的に断罪され処分されるのみだったとしたら、どんな気持ちになるでしょうか。今後会社のために活躍しようと思えるでしょうか?やる気をなくし、かえって新しいブラック社員を生んでしまうかもしれません

パワハラは許されるものではありません。会社としては毅然と対応する必要があります。しかしながら、 ハラスメント処分の目的は、加害者を罰することそのものではなく、再発を防ぎ、皆にとって働きやすい職場を作ることであるはずです。だからこそ、処分と本人の意図へのフォーカスはワンセットで行う必要があります。

パワハラの相談をきっかけとしてよりよい組織づくりを行っていくことが、再発を防ぎ、真のパワハラ対策となっていくのです。
公開日:2021.12.27

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office role代表 郡司果林 特定社会保険労務士

執筆者

office role代表 郡司果林 特定社会保険労務士

SEとしてシステム開発に携わった後、IT企業の人事担当として転職。自社の勤怠管理や給与計算のシステム化によるコスト削減、自社内の就業規則や制度構築に携わる。独立後は労働基準監督署相談員としてパワハラをはじめとする多くの労働相談を受ける。日本アドラー心理学会所属。著書「ITエンジニアの労務管理」(日本法令)DVD「クラウド勤怠管理システム導入」(日本法令)などがある。

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