「てにをは」とは、日本語の品詞の一つである助詞を指す言葉です。これは日本語独特の表現で「てにをは」を変えるだけで文章の意味が異なってしまうので、文章を作成する際は正しく使う必要があります。
文字起こし・テープ起こしの際には「てにをは」をあえて補う場合があります。例えば会話やインタビューなどの話し言葉では「私、それできます」「これ、持っています」など、助詞は省略されることが多々あります。そのような場合には、原稿を読みやすくするために助詞を補って文字起こし原稿を作成します。上記の例でいえば、「私はそれができます」「これを持っています」などの表現にします。ただ、助詞が異なると文章の意味が違ってしまうため、文脈をしっかり読み、話者の意図をくみ取る必要があります。
上の例で言えば、「これを持っています」であれば文字通りの意味ですが、「これは持っています」になると「これ」は持っているが「あれ」は持っていないことを言外に含んでいる可能性があります。これはその場に同席しているか録音音声を聞けばある程度判別ができますが、事後に文章だけを見て判断するのは難しい場合があります。ということはこの文字起こしの依頼者が完成原稿を受け取って検品をしても、文章だけを見ていると助詞の間違いに気づかない可能性が高いわけです。仮にこれがある会議録の一部分だった場合、誤った発言内容が公式記録として定着する恐れもあります。
もちろん文字起こし作業者は、そういうことのないように真剣に音声データと向き合うのですが、言葉を扱う仕事においてはたった一文字でも決しておろそかにできないという示唆が「てにをは」には含まれていますね。