文字起こし・テープ起こし用語集

同音異義語どうおんいぎご

日本語には「同音異義語」といわれる、耳で聞いたときの発音は同じでも意味が異なる言葉が数多く存在します。日本語は音の数が少ないため同音異義語が多いといわれ、文字起こし・テープ起こしをする際には注意が必要です。

同音異義語の例を挙げると、きこう(機構、気候、寄稿など)、かんしょう(鑑賞、観賞、干渉など)、しじょう(市場、史上、誌上など)、たいせい(体制、耐性、態勢など)、ほしょう(保証、保障、補償など)などがあります。
ちなみに、一番同音異義語が多いとされる単語には「こうしょう」があり「交渉、高尚、考証、公称」など、『広辞苑』第7版には51もの仮名見出しがあります。
音声データを聞いて文字起こしをする場合、この同音異義語の書き分けは非常に重要です。漢字が一つ違うだけで全く異なる意味になってしまうからです。文字起こし作業者は前後の文脈から正しい漢字を類推判断する能力が求められます。

「貴社の記者が汽車で帰社しました」などという言葉遊びは別としても、通常の会話でも同音異義語は頻出します。その多くは文脈やイントネーションの違いである程度正確に判断できるわけですが、時に思い込みが解釈を狂わせることもあります。例えばある山岳関係の会議で「最近のフジサンは・・」といった発言が出てくれば「富士山」の話題だと考えがちですが、実は「藤(ふじ)さん」という人物の話だった、ということもあり得ます。バカみたいな話ですが、間違いというのは得てしてこういうところで起きてしまうものです。

文字起こし作業者は日頃から語彙力を高める努力をしているので、一般的な同音異義語には対応できますが、専門用語や固有名詞、それらの略語などが出てくると正確に聞き取るのは大変です。ですから、仮に会議の文字起こしを依頼される場合は、会議参加者に配布される書類などを参考資料としてお預かりできると、単語を判断する手掛かりとなり、同音異義語があっても聞き分ける精度や効率が上がります。先ほどの「フジサン」の例でも、この会議の関係者に「藤さん」がいることが事前に分かっていれば、聞き分けが容易になることでしょう。