パワハラ防止、会社の対応フロー【7つの具体策】

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もはや私たちの周りで「パワハラ」の言葉を聞かない日はないくらいなのではないでしょうか。2022年4月1日~、中小企業でパワハラ防止対策が義務化されます。(大企業は2020月6月1日から)

この記事にたどり着いたあなたは、何かしなければならないとは思っても具体的に何をすればわからない、パワハラの基準ってなんだろう?とお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか?従業員からは「パワハラを受けている」と相談され、管理職からは「パワハラと言われるのが怖くて部下に注意できない」と相談され、いったいどうしたらいい?というお悩みの声も寄せられます。

厚生労働省の「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」ページでは、パワハラ対策について詳しく情報提供されています。
しかし事例は挙げられていてもうちの会社ではどうなのか分からない、という気分にもさせられます。会社としては何をすべきなのでしょうか?

会社が行うべきパワハラ対応の流れ

パワハラ対応は大きく分けて次の流れになります。

予防(事前におこなうべきこと) 1.トップがメッセージを発する
2.パワハラについて社内の理解を深めること、教育研修
3.パワハラが疑われる場合の相談窓口等の体制を整える
4.定めた措置等について就業規則に定める
問題が起きた場合の解決(事後におこなうこと) 5.事実関係のヒアリングを行う
6.関係者への措置を行う
7.再発防止の取り組みを行う

順番に見てまいりましょう。

予防(事前におこなうべきこと)

1.トップがメッセージを発すること

何事もトップの意志表示から。まずは会社としてパワハラは許さないよ、という意志を示すことが必要です。

2.パワハラについての理解を深めること

パワハラは許さない、と言うのであれば、最初に何がパワハラなのかを理解する必要があります。厚生労働省からはパワハラについて次のように定義されています。

「職場において行われる」次の3つの全てに当てはまるもの
  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの


具体的な行動パターンとしては次の6種類が示されています。

パワハラ6パターン
「NOハラスメント」厚生労働省パンフレットより)

暴力や、明らかに業務に関連しない人格攻撃が許されないことは分かりやすいのですが、悩まされるのが「業務指導」と「パワハラ」の境界です。

これについては、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導」についてはパワハラには該当しない、「平均的な労働者の感じ方」を基準とする、とされています。ですから「相手が嫌と感じたらパワハラ」ではない、ということになります。

しかし問題となるのは「平均的」「客観的に見て業務上必要かつ相当」「適正」の認識が人によって異なる、というところです。これがパワハラ対策の難しいところです。では、パワハラを理解するにはどのように進めたらよいのでしょうか?

次のステップで行うのが効果的です。

パワハラについては自覚がないことが多いため、一般的な知識に関する教育研修だけを行っても「自分ごと」として感じてもらうのが難しいです。これを補うには、最初にアンケートに回答することで「もしかしたら自分も?」という気づきや課題感を持ってもらった上で研修を行うのが効果的です。また研修だけでは、実際の事例がパワハラに該当するのかを判断するのは難しいため、自社での事例を取り上げ、6種類のどれに当てはまりそうか、行為者と被害者双方の意図などについてグループワークで意見を交換しあうとさらに理解が深まります。

3.パワハラが疑われる場合の相談窓口等の体制を整えること

実際にパワハラが疑われることが起きた場合に対応できる体制として相談窓口を決めます。パワハラかも?と感じたときに相談できる相手が必要です。

そして、相談後の対応フローを決める、就業規則等で懲戒等の手続を定めておく、などの仕組みの整備を行うこととなります。問題が起きる「前」に具体的な対応手順や担当者をきめておきましょうね、ということです。

窓口は人事の担当者になることが多いですね。男性女性、別々に選ぶとよいでしょう。外部の相談機関を利用する例もあります。社内窓口と社外窓口ではそれぞれ役割と効果が異なるため、目的に応じて検討するとよいでしょう。

【社内の相談窓口】
メリット:具体的対処・問題解決が可能になる
デメリット:相談者が特定される。相談相手がパワハラ行為者の場合に相談できなくなる
【社外の相談窓口】
メリット:匿名での相談が可能
デメリット:具体的対処・問題解決は難しい。1次情報を会社につなぐことが主な役割となる

4.定めた措置等について就業規則に定めること

トップの意志、パワハラが発生した場合の処分や個人情報の保持について規程で定めておくことにより、措置の実行性を持たせるようにしておく必要があります。またこれは従業員に安心を与えることにもなります。就業規則内に定めてもよいですが、ハラスメントのみの規程を作成することも効果的です。

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問題が起きた場合の解決(事後におこなうこと)

ここからは、実際にパワハラと疑われる問題が発生した後の対応になります。

5.事実関係のヒアリングを行うこと

まずは事実関係を正確に確認することが大切です。パワハラ対応についてはここが肝になるといっても過言ではありません。相談者の了解を得て、行為者、第三者にもヒアリングを行うこととなります。多くの場合、相談者と行為者の認識には食い違いがあります。この段階ではまだ「パワハラ」に該当するかどうかは不明な状態ですから、行為者にたいして「パワハラ」と決めつけることや、相談者に対して「大げさ」などと決めつけることなどをせず、あくまで中立の立場で事実を整理することに注意してください。問題となる場面について録音しておいてもらい、それを活用するのも効果的でしょう。

6.適切な措置、関係者へのフォローを行うこと

事実関係が明らかになったら、適切な措置、フォローを行います。行為者の言動の問題点の有無、懲戒、配置転換などの必要性、などの会社としての対応の説明を行います。

この段階で大切なことは、「パワハラか否か」の結果の判定だけに一喜一憂しないということです。よく起きがちな失敗は、パワハラでなければ安堵し、パワハラであれば罰を与えておしまい、になってしまうということです。それでは本質的な課題解決にはなりません。処罰が必要であれば毅然と対応するのが必要なことはもちろんですが、仮にパワハラに該当しなかったとしても、一方が「パワハラ」だと感じている状況そのものが、組織として改善すべき課題を抱えていることには変わりがありません。

会社は裁判所ではありません。パワハラ対策の目的は、誰かを裁くことそのものではなく、皆が働きやすい組織をつくることであるはずです。行為者を責めて終わるのではく、間違いを繰り返さないための取組と、相談者の精神的ケアを行っていきましょう。

7.再発防止への取り組みを行うこと

事前に教育やルールを整えても、パワハラによるトラブルは起きる可能性があります。なぜなら、人の感じ方には差があるからです。

ですから、問題が発生したことをきっかけに、次に同様の問題が起きたらどのように対応するべきかを、皆で考えていただきたいのです。それが再発防止につながります。裁判例は参考にしつつも、ぜひ「自社での事例」で考えてみてください。

最初からパワハラを行いたいと思っている人はいないでしょう。しかし表現の仕方を誤ってしまうことはあります。時代とともに「常識」のとらえ方も変わります。多くのパワハラの原因は「認識の相違」から始まります。パワハラそのものが発生しない組織づくりに取り組んでいきましょう。
公開日:2021.11.5

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執筆者
office role代表 郡司果林 特定社会保険労務士

SEとしてシステム開発に携わった後、IT企業の人事担当として転職。自社の勤怠管理や給与計算のシステム化によるコスト削減、自社内の就業規則や制度構築に携わる。独立後は労働基準監督署相談員としてパワハラをはじめとする多くの労働相談を受ける。日本アドラー心理学会所属。著書「ITエンジニアの労務管理」(日本法令)DVD「クラウド勤怠管理システム導入」(日本法令)などがある。