「議事録」と「議事要旨・議事概要」は、それぞれ「作成目的」と「公開範囲」が異なります。つまり役割が違うのです。これを念頭に置いておくと下の表にある「発言者の匿名化」「発言順の並び替え」「発言自体の省略」「不足部分の補充」といった作成ポイントになぜ違いがあるのか、すぐに分かるでしょう。それぞれの違いについて、具体的に解説していきます。
ポイント・ | 相対的な傾向議事録 | 議事要旨・ | 議事概要
---|---|---|
作成目的 | 詳細に残す | 簡略に | まとめる
公開範囲 | 非公開 | or 狭い広く公開 |
発言者の 匿名化 | しない | する |
発言順の 並び替え | ||
発言自体の 省略 | ||
不足部分の 補充 | ||
主な形式 | 会話文形式 | 地の文形式 箇条書形式 |
【議事録】
会議や面談などの発言内容を最初から順番通りに文章化したもので、議論の流れを詳細に追っていけるものです。監査や訴訟の際の資料といった各種の検討や検証などにも用いられます。
【議事要旨・議事概要】
議事録よりも読みやすい形で簡略にまとめられ、話題の共有や周知などに利用されます。
議事録が詳細な地形図だとすれば、議事要旨・議事概要はビジュアルに優れた簡易マップといったところでしょうか。
【議事録】
詳細に記録するがゆえにキワどい言葉遣いや非難の応酬といった生々しいやり取りも含まれるので、不特定多数への公開が不向きなことも多いでしょう。
【議事要旨・議事概要】
「報告」や「成果物」などとして文書化、資料化されるなどして、ある程度読まれることを前提にしています。議事を簡略にまとめることで不適切な部分が和らげられ、オープンにしやすくなります。
【議事録】
「誰」が「何」を話したのかを追跡できるのが議事録の役割なので、発言者の明記が基本です。実名を記す代わりに非公開扱いとして、出席者に忌憚ない発言をしてもらうという場合もあるでしょう。
【議事要旨・議事概要】
読みやすさを優先してイニシャル化や肩書・属性のみへの置き換え、場合によっては発言者自体の省略も行います。公開範囲が広いことへの配慮ともいえそうです。
【議事録】
話題が飛ぶ、議論が錯綜するといった場合、議事録では、発言順も含めての議論経過という意味で、実際の発言順を概ね維持します。
【議事要旨・議事概要】
議論の流れを踏まえて、話題ごとに発言順を並び替え、読みやすく整理します。
【議事録】
差別語や不適切な表現、乱暴な言葉遣いなどがある場合、議事録では、そのような発言もまた議論の一部だと考えて、表現を変えることはあっても発言自体は極力残します。
【議事要旨・議事概要】
問題のある発言に限らず重複発言、趣旨不明の発言なども含め、議論の趣旨を損ねない程度に省略もします。
【議事要旨・議事概要】
分かりやすさが大事なので、不足があれば適宜補充しても良いと考えられます。
上記3~6は「文字起こし→議事録→議事要旨・議事概要」と内容を圧縮していく過程での作業ですが、それを経て完成した文書だけでなくその作業に使った下書き・メモ書きを残しておくと良いでしょう。あとで議事内容の解釈に疑問点が出て来た時に「どの部分」を「なぜ」変えたのかが分かり、対処しやすくなります。ワード文書なら「コメント表示」や「変更履歴」を活用すると便利です。
同様の理由から、議事録、議事要旨の大元である録音データやその文字起こしデータも保存をお勧めします。
※これらのほか、以前のコラム「議事録・議事要旨作成を楽にするコツ」の「第2回
作成時間を短縮する」でご紹介したような、エクセルを使用した表形式のまとめ方などもあります。
公開日:2021.9.28