「議事録」と「議事要旨・議事概要」の違い

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「議事録」と「議事要旨・議事概要」は、それぞれ「作成目的」と「公開範囲」が異なります。つまり役割が違うのです。これを念頭に置いておくと下の表にある「発言者の匿名化」「発言順の並び替え」「発言自体の省略」「不足部分の補充」といった作成ポイントになぜ違いがあるのか、すぐに分かるでしょう。それぞれの違いについて、具体的に解説していきます。

ポイント・相対的な傾向 議事録 議事要旨・議事概要
作成目的 詳細に残す 簡略にまとめる
公開範囲 非公開or狭い 広く公開
発言者の匿名化 しない する
発言順の並び替え
発言自体の省略
不足部分の補充
主な形式 会話文形式 地の文形式
箇条書形式

1 作成目的

【議事録】
会議や面談などの発言内容を最初から順番通りに文章化したもので、議論の流れを詳細に追っていけるものです。監査や訴訟の際の資料といった各種の検討や検証などにも用いられます。

【議事要旨・議事概要】
議事録よりも読みやすい形で簡略にまとめられ、話題の共有や周知などに利用されます。
議事録が詳細な地形図だとすれば、議事要旨・議事概要はビジュアルに優れた簡易マップといったところでしょうか。

2 公開範囲

【議事録】
詳細に記録するがゆえにキワどい言葉遣いや非難の応酬といった生々しいやり取りも含まれるので、不特定多数への公開が不向きなことも多いでしょう。

【議事要旨・議事概要】
「報告」や「成果物」などとして文書化、資料化されるなどして、ある程度読まれることを前提にしています。議事を簡略にまとめることで不適切な部分が和らげられ、オープンにしやすくなります。

3 発言者の匿名化

【議事録】
「誰」が「何」を話したのかを追跡できるのが議事録の役割なので、発言者の明記が基本です。実名を記す代わりに非公開扱いとして、出席者に忌憚ない発言をしてもらうという場合もあるでしょう。

【議事要旨・議事概要】
読みやすさを優先してイニシャル化や肩書・属性のみへの置き換え、場合によっては発言者自体の省略も行います。公開範囲が広いことへの配慮ともいえそうです。

4 発言順の並び替え

【議事録】
話題が飛ぶ、議論が錯綜するといった場合、議事録では、発言順も含めての議論経過という意味で、実際の発言順を概ね維持します。

【議事要旨・議事概要】
議論の流れを踏まえて、話題ごとに発言順を並び替え、読みやすく整理します。

5 発言自体の省略

【議事録】
差別語や不適切な表現、乱暴な言葉遣いなどがある場合、議事録では、そのような発言もまた議論の一部だと考えて、表現を変えることはあっても発言自体は極力残します。

【議事要旨・議事概要】
問題のある発言に限らず重複発言、趣旨不明の発言なども含め、議論の趣旨を損ねない程度に省略もします。

6 不足部分の補充

【議事録】
不足部分の補充はあまりしません。補充したことによって発言の趣旨が変わり、議事録としての資料価値がなくなってしまうこともあるからです。

例)「あなたはどう思います?」「そう、私も(そう思う)」←カッコ内が補充部分

【議事要旨・議事概要】
分かりやすさが大事なので、不足があれば適宜補充しても良いと考えられます。

7 主な形式

以上のポイントから、議事録には、実際の発言に近い形の、会話文形式がなじみます。

◎会話文形式の一例

A常務:では本件について審議願いたい。
D部長:何かの出来事やある人物を調べたいときは、googleを使うといい。
C専務:私の仕事はテープ起こしだが、皆さんがインタビューをするときは、その人物について下調べをするだろう。
E部長:仕事柄、記者やライターがインタビューしているものを多く起こすが、彼らはすごく調べている。そういうものを聞きながら、「このように取材をするのだ」と勉強させてもらっているし、ブログは絶対に読んでいる。
B専務:最低限その人のブログがないか調べ、一通り目を通しておくべきだと思う。
議事要旨・議事概要には、一般公開を念頭においたフォーマルな地の文形式、あるいは、 簡略化に徹した箇条書形式も良いでしょう。

◎地の文形式の一例(匿名化・並び替え・省略あり)

部長①から、出来事や人物について調査する際には、ウェブ検索が一方法である旨発言があった。専務①から、一般にインタビューを実施する際には、当該人物について事前に調査をするだろうとの発言があった。専務②から、少なくとも、当該人物のブログの有無を確認し、あれば一読しておくべきであると思料する旨発言があった。部長②から、記者やライターは、インタビューの際に深く調べており、小職も取材の在り方について学びを得ている旨発言があった。

議事録を作る過程を保存しましょう

上記3~6は「文字起こし→議事録→議事要旨・議事概要」と内容を圧縮していく過程での作業ですが、それを経て完成した文書だけでなくその作業に使った下書き・メモ書きを残しておくと良いでしょう。あとで議事内容の解釈に疑問点が出て来た時に「どの部分」を「なぜ」変えたのかが分かり、対処しやすくなります。ワード文書なら「コメント表示」や「変更履歴」を活用すると便利です。
同様の理由から、議事録、議事要旨の大元である録音データやその文字起こしデータも保存をお勧めします。

※これらのほか、以前のコラム「議事録・議事要旨作成を楽にするコツ」の「第2回 作成時間を短縮する」でご紹介したような、エクセルを使用した表形式のまとめ方などもあります。

公開日:2021.9.28

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