ELANは、録音・録画された会話データの分析や言語研究における注釈作業に特化したツールとして、言語分析の現場でも高く評価されています。自由度が高く、細かい分析に向いている一方で、使い続けるうちに実務上の課題や運用の壁に直面する研究者さまも少なくありません。
この記事では、ソフトウェアELANをある程度使い慣れてきた中級者の方が陥りやすいポイントや、作業上の工夫、そして対応手段の一つとしてご相談いただける外部支援についてご紹介します。
ELAN中級者が直面しやすい主な課題
1. データ精査や事前準備に時間がかかる
ELANを本格的に使うようになると、意外にも「注釈をつける前にやるべきこと」が多いことに気づきます。例えば、
- どのTierにどの情報を記録するかといったルールの整理
- 録り溜めたデータのリネームや分類
- 事前の音声チェック
などが挙げられます。
こうした対応はELANの基本機能だけでは解消できない場合もあり、収録後にまとまった時間を取って整理する必要があります。
- ひとまず録ってはみたが、使えるかどうか分からない音声データが膨大にある
- 音声の確認だけで丸一日使ってしまった
といった声も実際によく伺います。
2. スキームやファイル構成のばらつきが研究全体に影響する
ELANはオランダの研究機関(マックスプランク心理言語学研究所)で開発・公開されているソフトであるため、公式ドキュメントやフォーラムは主に英語などの外国語で提供されています。日本語による包括的な公式マニュアルやサポートは存在しておらず、日本のユーザーはそれぞれが独自に情報を集め、個人ブログや講習会、書籍など多様なルートで学習を深める傾向があります。
そのため、特に複数名で作業する場合は、研究者ごとにELANの使い方や注釈ルールが異なっていることがあり、結果として注釈のばらつきや再整理の手間が生じやすくなります。
3. データ規模の増大によってスケジュールが圧迫される
ELANでは多くの注釈を付与することができるため、1件あたりの処理時間が長くなりがちです。少量であれば問題ない作業も、データ本数が増えてくると「いつ終わるのか見通しが立たない」と感じる方もいらっしゃいます。
特にTierの階層関係や複数の注釈を同時に整理するようなケースでは、処理の複雑さが一気に増します。学会を見据えたプロジェクト全体のスケジューリング、進捗の可視化といったマネジメント面での課題も、ELANならではのポイントといえるかもしれません。
東京反訳のELAN対応サービス
東京反訳では、ELANを用いた音声・映像データのアノテーション作業をお手伝いしています。下記のようなご要望に応じて、必要な範囲に限ったご相談も可能です。
- Tier構成やラベルルールに沿った注釈作業の一部対応(高精度な文字起こし・話者分離・タイムコードの挿入など)
- .eaf / .csv / .txtなど、ご希望形式への出力
- スケジュールに応じた短納期対応、大量データの並列処理体制
- ご確認いただきながら進められる、段階的な納品方式のご提案

また、注釈担当者の育成にあたっては、プロジェクトリーダーが研修を行い、Tierごとのルールや用語の扱い方について共通理解を整えるようにしています。これにより、担当者間での解釈のズレを抑え、品質の安定につなげています。
仕様書やサンプルのご提示が難しい場合も、フォーマットの試作からご提案することが可能です。
導入事例
下記のページにて、当社プロジェクトリーダーがお客さまのご要望をお伺いし、社内体制を組み立て課題解決に至るまでの一連のプロセスをご紹介しております。
データの取得・整形・注釈・分析という一連のプロセスの中で、研究者の皆さまは非常に多くの工程を担っておられます。その中で、
- 注釈作業だけお願いできたら助かる
- 全部ではなく一部の作業だけ依頼したい
東京反訳では、そうしたご相談にも対応できるよう、小ロット・単発の作業から、少しだけ複雑なご依頼まで柔軟に対応しています。
予算やスケジュールの都合、助成金や書類提出の制約などについても、事前にご事情を共有いただければ調整しやすいように工夫しております。
- 初期検討段階でのご相談も歓迎しております。
- 仕様が未確定でも、ヒアリングを通じてご提案可能です。
- 小ロットや試験的なご依頼にも対応いたします。
- 研究費・助成金のスケジュールやご事情に沿ったご相談も可能です。
- 業務委託・外注相談、社内調整用の説明書類作成のご要望も承っております。