人工知能搭載やIoT化が進むことで生じる懸念とは

人工知能搭載やIoT化が進むことで生じる懸念とは

2月も人工知能をはじめIoT(Internet of Things=モノのインターネット)やビッグデータといったIT技術関連のニュースが続々と配信されている。それらのニュースを見ていると、あらゆる領域で人工知能の活用が広がっていること、また今後はさらにあらゆるものとつながる世の中になっていくのだろうことを実感する。

ただ、同時に2月に配信されたニュースタイトルを見ていて改めて感じたのは、便利な裏には危険もまた存在し、多くの課題と懸念も残っているということ。では、このまま発展していくとどういう懸念や危険性があると指摘されているのだろう。最近のニュースをいくつかピックアップし、少しまとめてみたい。

■あらゆる領域で人工知能の活用が広がっていることを実感

テレビ電話が通訳に スカイプがリアルタイム翻訳機能(2015/2/4)

賢いぬいぐるみで情報提供、NTTが「おもてなし技術」(2015/2/19)

人型ロボにWatson、三菱東京UFJ銀行が先端技術の実用化にアクセル(2015/2/24)

スカイプはマイクロソフト傘下であるが、そのスカイプが同時翻訳機能「スカイプトランスレーター」のプレビュー版を2014年12月15日に公開。この「スカイプトランスレーター」はリアルタイム通訳といえ、売りはこの通訳機能が人工知能の技術をベースにしているというところだろう。音声認識、自動翻訳に加えて強力な学習機能を備えており、多くの人が使えば使うほど、その言語の精度が向上する仕組みになっている。

また、三菱東京UFJ銀行のほか、みずほ銀行や三井住友銀行など、多くの銀行で人工知能の導入が広がっており、その実用化の動きが見られる。その他にも人工知能関連のニュースは多く、今後はこれ以外にも自動車、教育、広告、製造業、医療、ファイナンス、メディア、小売など、あらゆる領域で人工知能が活用されていくことだろう。

■人工知能やIoTやビッグデータなど、それらの技術が利用され発展していくとどういったことが懸念されるのか

人工知能やIoTなどによりあらゆるものとつながり便利になっていくのはうれしいことだが、同時に懸念や危険性を指摘する声も多くある。では、どのような懸念や危険性があるのか。2月に配信されたニュースからいくつかピックアップしてみたい。

会話するバービー、子供の「空想奪う」と波紋 “盗聴”の危険性も指摘(2015/2/19)

バービー人形に人工知能が付くとは。玩具業界では今後こうしたハイテク技術を駆使した「スマートトイ」が主流になるといわれているが、人形との空想のおしゃべりがなくなり子供の想像力を奪うと懸念する声、また外部からのハッキングで子供たちの会話が盗まれプライバシーが侵害される危険性が指摘されている。

サムスン製テレビが会話に聞き耳? 音声認識機能に注意喚起(2015/2/10)

「聞き耳テレビ」はSiriと同じ――サムスンが説明(2015/2/12)

音声でテレビを操作できる「スマートTV」のように、IoT化と搭載された音声認識機能によって話した音声が収集され利用されるという問題は、多くの音声認識機能を利用した製品・サービスでも取り上げられている。アップルの「Siri」、グーグルの「Google now」、マイクロソフトの「Cortana」なども同様で、収集されたデータがどう保管され利用されるのかなどが不明なため、情報漏えいの危険性もないとは言えず、懸念する声も多い。

【参考】クラウド型音声認識サービスにおける情報漏えいリスクについて考える(2014/3/18)

日本の自動車会社に迫る危機は並大抵ではない(2015/2/14)

未来の車はどう変わるのか。「これからの20年で最大の変化は車の知能化である」という一文をどこかで読んだが、IoT化、人工知能搭載の流れは自動車にも波及し、人工知能の急速な発達により自動運転が現実的になってきた。ただ、このシステムが発展すればするほどハッキングによる自動車の乗っ取りなど、ECU、車載LAN、車外ネットワークにおける脅威が増すという懸念がある。

これまで以上にその対策が必要となるが、既存の自動車会社はこの辺りのセンシティブな問題にもあまり敏感に対処できているとは言い難いところも問題か。アップルの自動運転への参画にも見られるように、グーグルやアップルといったIT系企業にリードされるようになるのか…?

これは自動車業界だけに言えることではないのだろう。特にグーグルは膨大な電子データ(ビッグデータ)を蓄積し、ICT(情報通信技術)分野で世界的影響力を強めている。このままではグーグルが市場を独占し兼ねないという懸念も一方ではありそうだ。

■ユーザーとしてどう対応していくか

では、この流れにユーザーとしてはどう対応していけばいいのだろう。以前からもちょこちょこと取り上げてはいるが、やはりまずはこの状況を自分なりに理解し意識しておくことが必要なのではないかと感じている。

【参考】翻訳サイトの情報漏えい、悪いのは事業者? 利用者?(2015/2/20)

【参考】電池残量で居場所「93%特定」 アンドロイドの無防備さ利用…開発者警告(2015/2/25)

例えばスマホはもう欠かせないものだが、危険も多く潜んでいる。アンドロイドの無防備さから電池残量で居場所が特定できてしまうということでは、もはやバッテリーを抜き取る以外、防御策がないとは…。早く改善されることを望むが、こういう危険があるということをユーザーとしては知っておきたい。

データの収集など何でも駄目と規制してしまうとそれら技術の発展が阻害されてしまうし、とはいえ許可なく収集され放題ではユーザーとしても安心できないのが実情。ユーザーが安心して利用できる製品・サービスが増えることを期待はしたいが、自身としてもネットリテラシー(情報ネットワークを正しく利用できる知識や能力)をこの機会にもう一度見直し、安心できるサービスを選定する能力を身に付けたいところだ。