「10代ではフリック入力すら古い」で物議を醸す 音声入力を使わない理由って何だ?

「10代ではフリック入力すら古い」で物議を醸す 音声入力を使わない理由って何だ?

先日、ネットメディア企業・nanapi代表取締役の古川健介氏(@kensuu)が次のツイートを投稿。このツイートは一気に拡散し、平成10年生まれ(18歳)の”なぜ音声入力を使わないのか”という問い掛けに対して、多くのユーザーからコメントが寄せられた。

ニコニコニュース「10代ではフリック入力すら古い」で物議を醸す(2016.4.28 R25)

このツイートに対するツイッターユーザーのコメント、またニコニコニュースで取り上げられた関連記事に対するユーザーのコメントを見ていると、現状としては「音声入力を(積極的に)使わない」という人のほうが多いよう。

では、音声入力を(積極的に)使わない理由って何だろう?
ということで、一部コメントをピックアップし、まとめてみた。

・ユーザーのコメント
「仕事中にこっそりTwitterが出来ないから。」
「エロい検索を発声しろと?」
「音声入力はハマれば楽だろうけど、声を出すってことは他の人に聞かれたり電車内でやられたら迷惑なんだけど」
「フリックは使いにくいが我慢して使ってる、音声入力だとスマホに向かって独り言つぶやいてる人だと思われてもおかしく無い。」
「検索する度に声出すとか、周りの人に迷惑じゃね?(適当)okgoogleとか恥ずかしすぎるわ。」
「俺昭和生まれだけど音声がちゃんと認識されそうな環境なら積極的に音声入力使ってるよ?さすがに公共で使うほどモラル捨てて無いし……」
「自分が使ってる範囲では音声での誤入力ほとんどないけどな。人目が気にならない場ならバリバリ使う。」
「でも外でスマホに向かってしゃべるって構図はあんま見ない気が…みんな電話するときみたいに耳に当てながら音声入力使ってるの?」
「キーボード、フリック、音声入力、その時時によって使い分けてるなぁ~結局、全部使えた方が便利だと思うんだけどなぁ」

→ 人目が気になる・迷惑になる・恥ずかしい・内容的に口に出すのが憚られるといったことなどから音声入力する(声を出す・物に話し掛ける)のに抵抗を感じるというユーザー、そのため状況によっては使うといったユーザーが多数。そのほか、使いやすい方法で使い分けるといったユーザーも。

・ユーザーのコメント
「音声入力、面白くて試した見たことあるけどうるさいところじゃ使えないし内容が外部に筒抜けなので結局フリックになった。」
「フリック入力の方が早いし的確だからに決まってるだろう 音声だと少なからずどこか誤字がある」
「音声入力も便利なときはあるけどね、基本誤字多すぎて修正する時間の方が遥かに大」
「音声入力慣れすれば滑舌よくなるかなぁ」
「発音悪すぎて認識されないから( ˙-˙ )」
「えーあーが多い自分には音声入力は無理」
「声だと文章のフォント変更や飾りができないっていうのもあるな。「あぁ^~」とか「キマシタワー」とか。」
「音声の認識待ちがじれったいからあんまり使わない」
「音声入力だと手軽だけど、思ったような文章にならない。」

→ 音声入力機能が信用できない/使い勝手が悪い/慣れていないなどの理由から、音声入力を(積極的に)使わないというユーザーも。

・ユーザーのコメント
「無駄な機能だから見捨てた。」
「しゃべるよりキーボードで打つ方が早い人だっているんですよ」
「音声入力できる状況なら通話したらいいのに」
「フリック入力を面倒だとは思わないから。」
「フリック入力使ってるけど、キーボードあればそっちのほうが圧倒的に早い。音声入力は「文字入力」も難しい機器に慣れてない人向けのイメージ」
「音声入力か、試したことないですね。ちょっとやってみようかな?」
「ケータイ持ってないから知らなかったけど、今って音声入力がそんなに信用性高くなったのか、シーマンやらオペレータズサイドが懐かしいなぁ・・・。」

→ 音声入力機能を必要と感じていないユーザー、また音声入力機能を知らない/使ったことがない、使ったことはあるが今は使っていないというユーザーも意外と多そう。

そのほか、
「フリック入力も出たばっかのころって若干批判的な意見あった気がするし、音声入力当たり前の時代が来るのかもしれないよ?知らんけど」
といった中立意見のユーザーや、音声入力を積極的に使っているというユーザーなど、さまざまなコメントがあった。

まとめると、音声入力を(積極的に)使わない理由としては、
・音声入力する(声を出す・物に話し掛ける)のに抵抗を感じる(人目が気になる・迷惑になる・恥ずかしい・内容的に口に出すのが憚られる、などから)
・音声入力機能が信用できない/使い勝手が悪い/慣れていない
・音声入力機能を必要と感じない
・音声入力機能を知らない/使ったことがない
という大きく4つに分類できそうだ。

では、実際の音声入力の利用率はどの程度なのだろう。

これはスマートフォンの音声入力利用状況となるが、株式会社ジャストシステムが実施した「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2015年4月度)」(対象:男女15~69歳、有効回答数:1,100、プライベートで「スマートフォン」を利用の回答者(n=648))によると、
・「音声入力をメインで使っている」ユーザーは、1.7%
・「音声入力を時々使うことがある」ユーザーは、17.0%
・「音声入力を試してみたことがある」ユーザーは、26.1%
という結果に。

スマートフォン音声入力利用状況
スマートフォン音声入力利用状況※株式会社ジャストシステム「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2015年4月度)」p103~104の値と図を参考に音声認識ラボが作成

この調査結果は約1年前のもの、かつ母数もそれほど多くはないが、状況としては今もそれほど大きくは変わっていないと思われる。半数近くのスマホユーザーに音声入力機能の利用経験あり。ただ、スマートフォンの音声入力を半数近くが一度は試すも、使っているのは2割程度といえそうだ。

なお、スマートフォンに限らずPCやカーナビなども含めた音声入力全体でいうと、利用率はもう少し高くなるのではないかと思われる。

また、年代・性別別で見ると、「音声入力をメインで使っている」ユーザーで最も割合が高いのは、男性では20代前半(7.5%)、女性では10代後半(5.0%)という結果だった。ただ、音声入力を時々使っているというユーザーも含めると、若者よりも年配者のほうが高い割合となっている。

【参考】モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査 (2015年4月度) ジャストシステム(2015.5.15) 

ということで、逆にいうと現在スマホユーザーの約8割が音声入力を使っていないという状況である。

今後、音声入力の利用率をもっと上げていくためには、先に挙げた4つの音声入力が(積極的に)使われていない理由がそのまま現在の課題になるといえ、その課題の解決が求められる。

その際、今後の利用率向上を考えると、グラフの緑色のユーザー(「音声入力は知っており、試してみたことはないが興味はある」、「音声入力のことは知らない」、「よく分からない」というユーザー)は、現在でもアプローチする余地が残っているといえる。この28.4%のユーザーは、音声入力に対して興味があるというプラスのイメージを持っているユーザーやまだ音声入力機能を知らないというユーザーなので、音声入力を一度試してもらえば、継続して使うユーザーになるかもしれない。

ただ、そう考えると今後の利用率向上においてポイントとなってくるのは、グラフの赤色のユーザー(「音声入力を試してみたことがある」、「音声入力は知っており、試してみたこともないし、興味も無い」というユーザー)だろう。なぜなら、音声入力を知っているのに使っていないユーザーだからだ。

音声入力を試してみたことがある、すなわち音声入力を一度は試したが使っていないユーザー、また興味も無いというユーザーに対しては、アプローチがなかなか難しい。例えば現在の課題が解決し認識率や使い勝手が劇的によくなったとしても、もう一度使ってみようと思ってもらえなければ、その良さも伝わらない。また、興味も無いというユーザーに興味を持ってもらうには、どうアピールすればいいだろうか? そして、この赤色のユーザーが全体の53%を占めているのだ。

音声入力を使っていないユーザー約8割の内訳をいろいろと考えると、今後の音声入力の利用率は5割を超えられるかどうか、そこが一つの大きな壁になるような気がする。


【参考】「10代ではフリック入力すら古い」で物議を醸す(2016.04.27)