音声認識技術の世界市場規模、2017年には1130億ドルに達する見込み

音声認識技術の世界市場規模、2017年には1130億ドルに達する見込み

現在、音声認識技術はコミュニケーションロボットやゲーム、ネットワークサービスなどさまざまな場面で基幹技術となっている。大きなインパクトを与えたのは、2011年に市場投入されたアップルのiPhone向け音声エージェントサービス「Siri」だろう。音声認識技術はここ数年、米アップルや米グーグルなどによって急速に開発が進み、一般的に使われるようになった。

≫音声認識・音声合成・ボーカロイド – astavision 成長市場

この記事によると、音声認識技術の世界市場規模は2011年に既に470億ドル(≒4兆7,000億円)。年平均で16.2%ずつ成長し、2017年には1130億ドル(≒11兆3,000億円)に達すると見込んでいる(BCCリサーチ社による)、とのこと。さらに、コミュニケーションロボットなどを実現する上で音声合成技術も音声認識とは切り離せないが、音声認識・音声合成技術全体としての世界市場は2025年に2,000億ドル(≒20兆円)に達すると見られているよう。音声認識の発展は今や人工知能技術の進化が大きく関わるといえるが、ここに人工知能の領域も加えると、さらに大規模な市場となることだろう。

人工知能や音声認識・音声合成といった技術は、私たちの日常生活において既にスマートフォンやパソコン、あるいはお掃除ロボットやコミュニケーションロボットなどに利用されており、もう身近な技術となっている。今はまだ人工知能のレベルや音声認識の精度なども進化の途中段階にあり実用的ではない場面も多いかもしれないが、それらがより高度な知能型音声対話機能を備える日もそう遠くないといっていいのではないだろうか。今後の成長が期待される技術だ。

実際、現在多くの人工知能に関わるプロジェクトが進行中である(【参考】未来を感じさせるプロジェクト大集合 – 音声認識ラボ)。例えば、人工知能がぴったりの相手を見つけてくれる「人工知能コン」といった面白いアプローチもあれば、医療分野での人工知能利用、未来のクルマといった真面目な分野での応用もある。

先ほどのastavision 成長市場の記事によると、今後特に期待される成長市場はヘルスケア、未来のクルマ、セキュリティーといった分野のようだ。その他にも多くの分野でさまざまなアプローチがなされている。世の中が今後どう変わっていくのか、楽しみでもあり、ちょっと怖くもある。

人工知能・音声認識技術を利用したもの・サービスが世の中に普及していくにつれて個人的によく考えてしまうのは、その正確さというとちょっと厳密には伝えたいことと違ってくるのかもしれないが、人工知能を本当に信頼できるか、本当に信じて委ねられるか、ということだ。

例えば「Siri」やグーグル検索でも、正確な答えが絶対に返ってくるわけではない。正確な答えのときもあるし、間違っているときもある。どう受け止めるかはユーザー次第というか、ユーザーの判断に任されるし、今はまだそれで問題のないサービスだ。そして、ユーザーもそういうものだと理解しているところもある。

しかし、今後特に成長が期待される市場のヘルスケア、未来のクルマ、セキュリティーといった分野で例えば間違い・失敗は許されるのだろうか。間違い・失敗はあるとしても、もし例えば人工知能の判断によって何か事故や損害が生じた場合、その責任は誰が追うのだろう。人工知能を信じて利用した自分自身にやはり責任があるのだろうか。

また、現在構想あるいは進行中のプロジェクトの中には、例えば死んだ人を人工知能で仮想的に復活させるといったものや、自分の人格をコピーして自分の代わりとする人工知能アバターといったものもある。

【参考】al+は人格をコピーして、あなたの代わりに仕事をするクラウド上の人工知能アバター(2015/1/27)

これらが実現したとして、例えば自分の人格をコピーした「自分らしい」アバターが自分に代わって受け答えをした場合、それは自分が答えたということにやっぱりなるのだろうか。死んだ人を人工知能で仮想的に復活させられるとして、それはその人だといえるのだろうか。例えば人工知能で復活した故人による遺言は有効なのか、とか。考え出すと止まらないが、状況によって素晴らしい応用にもなり得るし、困った事態にもなり兼ねないと考えると、今後もっと厳密に議論しなければいけない時期も来るのだろう。

こんなことを考えてしまうのは、今はまだやっぱり人工知能との会話といっても厳密な対話ではなく、結局「対話感」を得ているだけだからかもしれない。将来的にどうなるかは分からないが、今のところは。

ある意味、人工知能は人間よりも正しいし正確だ。だが、だから信頼できるかというとそうではないところが人間の複雑なところだ。人工知能の導入分野によっては厳密な取り決めなどが必要になると思うが、今は技術の発展が先行しているように感じるところも不安に思う要因なのだろう。とはいえ、今後の技術発展を個人的には前向きに見守っていきたいと思っている。