「現在さまざまな自律移動型ロボットの開発が進められているが、その運用について詳細な規定や法律はまだなく、運用次第では事故につながる可能性も。東京五輪が開催される2020年をロボット飛躍の年にしたい日本、東京五輪での本格運用を目指し、政府が自律移動型ロボットの運用ルール作りに動き出した」
≫政府、自律型ロボットのルール策定へ 平成30年度に整備 東京五輪で本格運用(2015/7/17)
日本政府が自ら判断し行動する自律移動型ロボットの運用ルールを2018(平成30)年度までに整備する方針を固めた。空港などでの実証実験を通じて人に対する安全性を確保するルール作りを進め、2020年の東京五輪までに公共の場での本格運用を目指す、とのこと。
政府がロボット運用のルール作りに着手する背景としては、たびたび起こっている小型無人機「ドローン」の落下といった事故の影響も大きいよう。ドローンは、運用上の具体的なルールや法規制が整備されていない中で急速に普及し、現在、人混みでの落下事故やプライバシーの侵害などが問題となっている。
自律移動型ロボットについても、今後普及が急速に進む可能性があるのに現在はその運用について詳細な規定や法律がまだないため、運用次第では事故につながる可能性があるとみて、先にルール作りを進めるべきという判断に至ったようだ。
確かに、自律移動型ロボットの身近な例としてはソフトバンクのコミュニケーションロボット「Pepper(ペッパー)」があるが、6月20日の一般向け販売では初回販売分1,000台がわずか1分で完売するという人気ぶり。また、Pepperはユーザーが柔軟にカスタマイズすることができ、例えば面白いところでは太極拳を覚えさせるといったことも可能だ。ただ、柔軟にカスタマイズできるのはいいが、規制がなければ独自改造されたPepperが何らかの事故や事件を起こす可能性もないとは言えない。
また、今後はさまざまな自律移動型ロボットが登場してくる予定だ。例えば、次のようなプロジェクトが現在進行中である。
≫変形ロボットプロジェクト、神器建造ジェイダイト「Project J-deite」
変形ロボットプロジェクト「J-deite(ジェイダイト)」は、株式会社BRAVE ROBOTICSとアスラテック株式会社が共同で行っているもので、現在は巨大変形ロボット「J-deite RIDE(ジェイダイト・ライド)」の開発が開始されている。「J-deite RIDE」は、人型(ロボットモード)と車型(ビークルモード)に完全変形できる、全長約3.5メートルの人型ロボット。ロボットモードでは二足歩行が可能となり、ビークルモードの状態では実際に人が乗って運転できるようになる予定で、2017年中の完成を目指しているという。
【参考】巨大変形ロボット「J-deite RIDE」の開発に着手(2015/6/12)
ビークルモードの最高時速は60キロ、前輪駆動方式の電気モーター車で定員は2名、操作は内部コクピットからの有人操縦または無線による遠隔操縦にする計画だ。フレームはアルミニウム合金で、人型の関節は30カ所以上。変形所要時間は10秒以内(予定)となっている。
見た目は「トランスフォーマー」を思い出すが、このプロジェクトはタカラトミーのサポートを受けているので、この顔立ちも公認ゆえかも。「トランスフォーマー」は、タカラトミーより発売されている変形ロボット玩具シリーズで、漫画やアニメのほか映画化もされ、世界中でヒットしている。
ただ、この「J-deite RIDE」が自律移動型になると、ロボット運用だけでなく道路交通法など、かなり幅広い規制が必要となってくる。このロボットの実現は個人的にかなり萌えるが、実際に現実世界に登場するとなると、安全に運用されるよう、しっかりとしたルール作りをしてほしい。
また、現在、東京五輪が開催される2020年をロボット飛躍の年にしようとする動きが加熱している。2020年の東京五輪では、例えばロボットタクシー、おもてなしロボット、清掃・搬送ロボット、小型飛行監視ロボットなどが見られるかもしれない。そのような中、これらロボットが安全に運用されるよう、ルール作りが求められている。
【参考】ロボット開発、五輪でアピール=未来社会へ官民で推進?20年東京五輪(2015/7/27)
政府の自律移動型ロボットのルール作りに向けては、2017年度に関係企業・団体を公募し、2018年度に実証実験を実施。その実験結果を分析し、一般環境での安全な運用を確保するために必要なルール作りを進める予定とのこと。具体的には、ロボットの動作速度や大きさ、外装の素材などの規定や、障害物などに衝突した場合に自動停止する機能搭載の義務付けといった規制も検討する方針のよう。
2020年の東京五輪では中でも多くの外国人旅客が利用する空港でロボットを活用することが検討されているようだが、それ以外にも今後ロボットの活躍が期待できる分野は多い。その技術やルールが世界的なデファクトスタンダードとして確立することなども目指し、日本においてさまざまな法整備が検討されることになりそうだ。