音声認識を利用する際に知っておきたい注意点

音声認識を利用する際に知っておきたい注意点

「音声認識があなたのプライバシーを侵害するかもしれない!? 音声認識のセキュリティについて考える」

このブログの中でも取り上げてきたが、Google音声検索やSiriなど、現在はさまざまな音声認識機能を利用することができる。音声でメールを書く、音声でウェブ検索を行う、音声で電話をかける等の操作を実行するなど、音声認識でできることは多岐にわたり、とても便利だ。

しかし、それと同時に、そこで発した音声などの情報が収集されているということは、ご存じだろうか。音声認識を仕事で利用したいと考えている人も多いと思うが、今回は音声認識を利用する上でのセキュリティについて触れてみたい。

例えば、Siriの操作で考えてみよう。Siriに話し掛けるといろいろと応えてくれるが、そのSiriの操作は自分のiPhoneの中だけでは完結しない。Siriを利用するには3G回線あるいはWi-Fiに接続した状態でなければならず、そのネットワークを使ってSiriはAppleのデータセンターと高速で通信している。そのためSiriは発言内容や要求を素早く理解し即座に応答してくれるのだが、逆に言うと、それは音声の情報がApple のデータセンターに送信されているということだ。<>
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ここで注意したいのは、Siriはユーザが話した内容を記録してApple のデータセンターへ送るという点。意識していないかもしれないが、例えば仕事でメールを打つ際にSiriを使っていれば、その内容はすべてAppleに保存されるかもしれないのだ。また、Siriではメール以外にもさまざまなことができるが、そこで行われた内容も保存されているかもしれない。

では、保存されているとしたら、AppleはSiriから送られてきたデータをどう取り扱うのだろうか。Siriに関する規定についてはiOSソフトウェア使用許諾契約に記載され、iOS 5などの利用規約に含まれているが、あなたがiPhoneで電話やSafariなどのアプリを使っているのなら、すでに「同意する」のボタンをタップしているはずだ。

そして、Appleとその子会社・代理人がSiriのサービスの提供や品質向上のためにデータを収集し利用できるとなっている。しかし、意識したいのは、その後どう扱われるかについてはブラックボックスであるということ。話した内容はAppleに送信され、テキストに変換されて記録されるが、こうした情報をAppleがどれくらいの期間にわたって保存し、誰が見ることになるのかは不明だということだ。

そのため、例えばIBMではSiriの使用を全面的に禁止したということで以前ニュースになった。それは、このSiriの動作による社内情報漏えいを懸念してのことだ。

【参考】IBM、社員に「Siri」使用禁止を命令
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6046250

この記事にも書かれているが、企業秘密に関する情報をAppleが収集しているかもしれないなどと考えるのは、行き過ぎかもしれない。しかし、どう扱われるのかがブラックボックスである以上、絶対に大丈夫とは言い切れないのだ。情報が保存されているサーバーが攻撃されるかもしれないし、もしかしたら知らない間にあなたのプライバシーも侵害されている……かもしれない。

ちなみに、IBMはGoogle音声検索を禁止していない。では、SiriとGoogle音声検索の違いは何なのだろうか? 一つは、Siriはメールやテキスト・メッセージの作成に使用できるので、理論上は企業の機密メッセージなどをAppleが保存できるということ。もう一つは、Googleはオプトインサービス(ユーザが収集するかどうかを選択できる)があり、また、通常は音声をすべて匿名化して保存しており、個人ユーザを突き止めることが不可能ではなくとも困難になるということ。これらが利用を分ける大きな違いのようだ。

【参考】Google音声認識のカスタマイズとプライバシー
http://support.google.com/mobile/bin/answer.py?hl=ja&answer=186263

ここではSiriを取り上げたが、この注意点はSiriだけではない。音声認識はとても便利でさまざまなものが出ているが、これらの危険性があるということをユーザは意識し、その機能の使い方をしっかり考えた上で選択して、便利に使ってほしいと思う。仕事で使う場合、セキュリティには特に注意したいところだ。

(9月26日 一部加筆修正)