4.経費の消費税計算について
Aさん:経費としての消費税の申告をする場合、例えばパソコンを買ったときに消費税を1万円払ったら、その1万円分の証明書をくださいと電気屋さんに言うのでしょうか。

山岡税理士:端的に言うとそうなります。これからはインボイスの要件を満たした記載内容、つまり消費税額とインボイスの登録番号が載ったレシートが出てくることになります。買った瞬間に手元にインボイスがある状態になります。

Bさん:大きいお店はインボイス対応してくれそうですが、よくAmazonで仕事道具を購入するのですが、Amazonに出店しているマーケットプレイスのような小さいお店はインボイス対応してくれるのでしょうか。

東京反訳(神林):Amazonに出店している免税事業者は、2023年10月以降消費税を取れなくなるようです。Amazonからの請求書には消費税「0円」で出てきます。ようするに免税で購入できることになりますね。

Aさん:免税事業者だったら、経費計算についても消費税が要らないということですね。

山岡税理士:はい、今までどおりです。

Cさん:交通費はどうなりますか。

山岡税理士:交通費はインボイスの領収書が要らないという特例があります。

Aさん:経費で落とそうと思えば、これらを1個1個確認しなくてはいけなくなるのですね。

山岡税理士:そうなります。ただ、会計ソフトを利用することにより、消費税コードをつけて区分し、最終的に集計するなどの方法もあります。

Cさん:課税事業者になったら、確定申告に消費税の表などを提出するのですか。

山岡税理士:そうです。別途消費税の申告書が登場します。この消費税の計算が大変だという方が大半だと思いますので、先ほどお話しした簡易課税を選択する方も多いだろうと思います。

経費として消費税を申告する場合は、インボイスに対応した業者から購入する必要がある

5.インボイス制度になって変わること
Bさん:ここまで聞いてきて、課税事業者になるメリットがイメージできません。免税事業者という選択肢があるのであれば、これまでどおり免税でいきたいという気持ちがあるのですが、具体的に何が変わるのでしょうか。

山岡税理士:今まで皆さんが受け取っている売上げは、先ほど説明したコンビニのお茶の110円と同じで、一部は10%の消費税という形でした。ただ、皆さんは免税業者なのでその10%については納めなくてもよかったということです。
そして、払う側(東京反訳)は、消費税の申告書を作るときにその10%を(仕入れ)消費税として引けていたのが今までの日本の消費税の制度だったのです。
それが根幹から変わるのが今回のインボイス制度です。
具体的には、今後インボイスに対応した事業者の領収書や請求書しか使えなくなります。つまり、インボイスに対応していない事業者に対して、払った側は消費税を引けなくなってしまうのです。
例えば、Aさんは「課税事業者」、Bさんは「免税事業者」とします。「販売価格2,200円(税込)」の商品をこの2人から仕入れたとします。2人とも同じ「仕入れ価格1,100円(税込)」だと仮定すると、Aさんは消費税を引けるけれども、Bさんは消費税を引けない。こうなると、普通Aさんから仕入れたいとなりますよね。

Aさんから仕入れた場合(課税事業者)
・販売価格 2,200円(本体価格2,000円 消費税 200円)
・仕入れ価格 1,100円(本体価格1,000円 消費税 100円)
・納付消費税 200円-100円=100円

Bさんから仕入れた場合(免税事業者)
・販売価格 2,200円(本体価格2,000円 消費税 200円)
・仕入れ価格 1,100円(本体価格1,100円)※免税事業者のため消費税が取れない
・納付消費税 200円-0円=200円
※仕入れた側が免税事業者分の消費税も納付しなければいけない

これがフリーランスの仕事が激減するんじゃないかと言われているポイントになります。免税のままでいったら、課税を選択している人に仕事を持って行かれてしまうのではないかという懸念です。ただ、そうなると大変なので、国のほうも移行に伴う経過措置を設けています。

インボイスに対応した事業者の領収書や請求書でないと消費税を引けなくなる

国は移行に伴う経過措置を設けている

6.経過措置について
山岡税理士:最初に課税事業者を選択しなかった人の領収書や請求書も、最初の3年間は80%認めるという制度です。その後3年間は半分の50%になり、さらにその後は「0」になります。
なので、恐らくほとんどの企業は、これからも免税事業者には残りの20%を引いた形で請求書を作って、他の事業者さんとバランスを取るのではないかと思われます。

・免税事業者から「消費税込み1,100円(内消費税100円)」で仕入れた場合のイメージ
 最初の3年間 : 消費税100円 × 80% = 80円を引くことができる
 次の3年間  : 消費税100円 × 50% = 50円を引くことができる
 更にその後  : 消費税100円 ×  0% = 0円 引くことができなくなる

Bさん:なるほど、免税事業者のままいったとしても、移行措置の中で(消費税の分が)だんだん減っていって、6年後には「0」になると。一方課税事業者だと消費税の課税方法が選択できるため、さっさと課税事業者になって、自発的に納税額を計算して申告することもできるのですね。

Aさん:ようするに、今までは会社が私たちの消費税を代わりに申告してくださっていたということですよね。これからは、課税事業者になるか、もしくは免税事業者のままで消費税分のお金を会社に納める等をしないと、会社が消費税分損をしてしまうのですね。

東京反訳(野上):そういうことになりますね。(課税事業者として)消費税をそちらで納めていただくか、(免税事業者として)納めていただけないならば会社が代わりに納めなければいけないいということですね。僕は、東京反訳の仕事以外に個人事業主もやっていますが、これまでは消費税分得をしていたのだと思います。今回の制度で、消費税分の収入を取り上げられてしまった感がありますけれど。本来払わなければいけないものを免除されていただけということですよね。

山岡税理士:おっしゃるとおりです。今まで得をしてきたというのは確実にあって、それが段階を経てなくなってしまうということです。

免税事業者にも計6年間の経過措置があり、段階的に消費税の控除率が変わる

これまで免除されてきた消費税を納税しないといけなくなる

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