1.インボイスという言葉を知っていますか?
Aさん:最近ラジオなどでインボイスという言葉を耳にして何かをしなければいけないのかなとは思っていました。

Bさん:ネット上で自営業の方々がザワついているのを感じています。今のざっくりとした認識は、年収が10%減るのではないかと思っています。確定申告も大変になりそう。

Cさん:加入しているフリーランス協会のコラムと、ツイッターで見ました。「個人事業主を直撃して、ものすごく収入が減るぞ」という投稿や「いや、表示の仕方が変わるだけだ」という投稿を見ましたが、専門的な内容が分からずふわっとした認識です。

山岡税理士:ありがとうございます。皆さんはこれまで「所得税」は確定申告されていたけれども「消費税」の計算は一切やっていなかったと思います。
本当は事業を営んでいる「個人の方」も「法人の方」も、原則としては消費税を計算して納付しなければいけないという決まりがあります。
しかし年収が1,000万円以下の小規模な事業者は「消費税を納める義務を免除してあげます」という制度があります。
消費税の義務を免除されている事業者のことを「免税事業者」といいます。
逆に消費税を納めている事業者のことを「課税事業者」といいます。
ワーカーの皆さまの多くは「免税事業者」のほうが多いと思われます。
インボイス制度施行に当たってまずやらなくてはいけないことは、「課税事業者」か「免税事業者」を選ぶことから始まります。
何も手続きをしないと自動的に「免税事業者」になってしまいます。
ぜひ皆さんには前提知識をある程度身に付けていただいた上で、ご自身にとってどちらがいいのかを選んでいただくことを一つの目標にしていただきたいと思います。

原則としてすべての事業主は消費税を納付しなければいけない義務がある

消費税の義務を免除されている事業者 ⇒ 免税事業者

消費税を納めている事業者 ⇒ 課税事業者

「課税事業者」か「免税事業者」をご自身で選ぶことが必要

何もしないと自動的に「免税事業者」になる

2.消費税の考え方
山岡税理士:インボイス制度を知る上で、まずは「消費税」の考え方を知っていただく必要があります。
例えば、コンビニでお茶が「110円」で売られていたとします。
消費税が10%だとしたらコンビニが国に納付する消費税はいくらになるでしょうか?
※今回は分かりやすくするため軽減税率は考えず、消費税は10%で計算します。

・コンビニ販売価格 110円
内訳「お茶本体 100円」「消費税 10円」

コンビニがこのお茶を「88円」で業者から仕入れていたとします。
・コンビニ仕入れ価格 88円
内訳「お茶本体 80円」 「消費税 8円」

・国に納付する消費税額
(販売価格)消費税10円 −(仕入れ価格)消費税8円=(納付)消費税2円

このように、自分が預かった消費税から、自分の事業のために払った消費税を引いた差額を国に納付する形になります。
皆さんはサービス業ですので、仕入れはないと思いますが、経費はあると思います。
例えば、作業のために購入したパソコンの消費税は「自分の事業のために払った消費税」と言えます。

Aさん:ということは、経費によって納める消費税額が増減するということですか?

山岡税理士:そのとおりです。経費がたくさんかかれば、自分が払った消費税もたくさんあるはずですので。

このように課税事業者になったとしても消費税の制度として、自分の売上げの110分の10が丸々持って行かれるというものではないのです。

経費がある場合、自分の売上げに対する消費税をすべて納付する訳ではない

売上げの消費税−経費の消費税=納付する消費税

3.消費税の申告方法「一般課税(本則課税)と簡易課税」
Aさん:課税事業者になった場合、払った消費税をただ合計すればいいのですか?

山岡税理士:例えば青色申告の表では、消費税がかかっている経費、かかっていない経費、消耗品、軽減税率など、科目ごとに1個1個カウントして考えていきます。これを「一般課税(本則課税)」といいます。

Aさん:そこまで自分で申告しなければならないのですね。大変ですね。ちょっと無理かもしれません。

山岡税理士:そのような方のために、一部の小さい法人や、個人の方に対して手続きを簡単にするために「簡易課税」というものがあります。
これは、年間売上げの消費税の50%を経費の消費税として概算計上していいという制度です。
※サービス業の場合は50%ですが事業によって割合が異なります。

例えば年間売上げが550万円として、10%の50万円が消費税となったときに、50万円の50%である25万円を経費の消費税として概算計上できます。よって納税額は差し引き25万円となります。
1個1個カウントせずに1年間の売上げに対してまとめて計算できるので手続きが簡単になります。

Aさん:それは便利な制度ですね。

Cさん:その簡易課税を選択した場合、ずっと簡易課税を使えるのですか。

山岡税理士:現行の制度でいうと税抜年収で5,000万円いかなければ、ずっと簡易課税を利用できます。
ただし、注意点もあります。いずれの課税方法を選択しても、1度課税事業者になると2年間は課税事業者を続けなくてはいけないというルールがありますのでよく考えて選択する必要があります。

一般課税(本則課税):科目ごとに経費の消費税計算が必要

簡易課税:売上げの消費税の50%を経費として計上できる(※サービス業の場合)

簡易課税は税抜年収5,000万円未満であればずっと利用できる

課税事業者:最低2年は続けなくてはいけないルールがある

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