経験者インタビュー

S.I.さま(40代女性、キャリア15年、年収約100万円)

「晴れていればふとんが干せますよ(笑)」

旦那さまと中3、小5のお子さまと4人で郊外にお住まい。
高校を卒業後、専門学校、職業訓練校を経て建設コンサルティングの技術部付き事務、その後メーカーのマーケティング部に所属し、結婚退職。家庭に入り妊娠8カ月目まで生命保険会社のフルタイムパートを行い、出産後にテープ起こしリライターとしての活動を開始。
育児・家事と両立ができるテープ起こしの良い点やたいへんな点、月の収入などについてお話いただきました。

-このお仕事を知ったきっかけを教えてください。

私がメーカーで働いていたときにキー入力が速かったので、会社の先輩に「それだけ速ければテープ起こしの仕事ができるよ」と言われたのが、初めて「テープ起こし」という仕事を知ったきっかけだったんですね。その時に教えてもらって、ずっと頭の片隅に残っていました。

-どういう経緯から、実際に仕事として始めることになったのですか。

出産後、子どもを預けるところがなかったのですよね。「何か家でできるものがないかな」と公民館で本を見ていたら、そこにテープ起こしをやっていた人の話が出てきたんです。
それで思い出して「テープ起こし」をネットで検索した。14~15年前ぐらいのブロードバンドが普及し始めた頃でしたね。ネットで検索したら、廿(にじゅう)さん(※)が関わっていたオンライン講座が最初に出てきたので、何も考えずに申し込んでしまいました。

※ 廿里美さんはテープ起こし・音声起こしの総合情報サイトokosoを運営、またテープ起こし講師、関連書籍出版を行っているテープ起こし業界で著名な方です。

-まずは講座を受けてから始めようと思われたわけですね。

そこでは、かなり叩かれました。というのも、そこの講座は一度別の講座を経験した方たちがきちんと起業するための講座だったのですね。ある程度基礎はあって、それよりもステップアップして独立するためにはどうするか、みたいな雰囲気の講座に素人がいきなり入って(笑)。

なのでML(メーリングリスト)に投稿するメール内容なども、皆さんプロの方なのでとてもきれいな文章だったんですよ。そこでずれた素人的な投稿をしていたので目立ってしまいました。

でも逆に目立ったことがよくてフォローしてくれる、気にかけてくれる先輩が出てきまして。その講座が終わった後に「荒削りだけど、すこし気になるから手伝わない?」と声をかけていただきました。

テープ起こしのお仕事経歴

-テープ起こしの仕事を始めてからのことをお教えください。

オンライン講座を修了した後、その先輩経由で毎月インタビューの仕事をいただいたのが私の最初の仕事でした。1本が2時間ぐらいのインタビューを1週間から10日ぐらい納期をいただいて起こしていました。

子どもがまだ乳飲み子でしたので、それが大変でしたね。授乳の時間があるので夜寝ないでやる感じでした。とはいえ、その時主人は会社が倒産しかかっていたので、どうしても乳飲み子を抱えた自分も仕事をしたかった。

でもその時「テープ起こし」に非常に熱中していたのでできたのですよね。それにやっていることがとても面白かった。芸能人さんのインタビューなどがありましたね。

-当社に登録いただいたのはその後ですね。

その先輩ライターさんはいろいろなお仕事をお持ちですので、インタビューとは別の仕事もくださったり、違う会社を紹介してくださったりしている中で、東京反訳さんの前身の会社に登録させていただきました。それは下の娘がお腹にいる時でしたが、せっかく決まったので出産後も少し仕事量は減らしながら続けていました。その時にはとうとう主人の会社も倒産してしまいましたので。

最初の5年ぐらいは本当に覚えたくて一生懸命熱中してやっていましたね。オンライン講座の後には、技術をアップさせるためにテープ起こしの通信教育もやりました。本当に私、自信なかったので。当時は勉強している人しか入ってこない世界でしたね。

-月にどのくらいの時間数をテープ起こしされるのでしょうか。

最初の2~3年間は勉強もしながらでしたので、1カ月にライターの先輩からいただいた2時間1本、もしくは2本程度でしたね。東京反訳に入ってからは月5時間ぐらいに加えて、たまに先輩ライターからの2時間のお仕事やその他のお仕事を少しずつこなしていました。

ここ4年間くらいは東京反訳さんからのお仕事が非常に増えてきておりますので、平均月10~12時間ぐらいに増えてきています。特にこの1、2年はとても多い状況ですね。

-月にどのくらい稼げるものでしょうか。

最近4、5年は月5~13万円の間ぐらいでしょうか。103万円の扶養の範囲内を意識して作業していますので、EXCELに入れて計算しながら仕事を調整しています。去年はぎりぎりでしたね。最近は東京反訳さんのお仕事以外は、少し外すようにしています。

103万円を超えるとなると、130万、160万円を超えてこないとメリットが出ませんので、そこを目指すには自分のスキルアップも必要になってきますね。


(※税のメリットにつきましては各ご家庭により状況が違いますので、最終的なご判断は税理士や社労士等の専門家及び税務当局へご確認ください)

-収入は、最初から順調でしたか。

最初はパソコン、ヘッドフォン、ソフトを購入する必要があって、いろいろと出費が多かったですね。私が始めた15年前はまだカセットテープと資料を郵送する時代でしたから、特に。例えばフットペダルでカセットテープのスタート/ストップができるトランスクライバーという機械。これなんて7万円ぐらいしたんじゃないのかな。当時はそれが無いと仕事にならなかったから、最初の投資は大きかったですね。パソコンも高い時代だったし。
その意味では本当に収入になり始めたのは、始めて少し経ってからでしたね。

スキルアップについて

-スキルを身につけるために工夫されたことはありますか。

オンライン講座を最初にやって、その後仕事をしながら通信教育をやりました。また最初に声を掛けてくれた先輩が、最初のうちは原稿に赤入れをしてくれていました。「荒削りだけどセンスがある。たまに突拍子もない間違いはするけど」という釘を指されながら。それからその時に言われたのは、

「1回起こし終わった後に、全体をざっと読んでいくと違和感を感じる箇所があるはず。その違和感を流してはいけない。何となく『あれっ』と思ったところには、必ず何か間違いがあるから。1回打ち終わったあとに(できれば)少し時間を置いて、プリントアウトして確認してください。それで『ん?』と思ったところはチェックして」
と言われました。その時はまだあまり分からなかったのですが、ようやくこの5年ぐらい前ですかね。「違和感ってこのことかな」ということが分かってきたのは。

-経験を積んでいくと、何年経っても成長するお仕事なのですね。

特に私は、最初ひどかったと思いますので(笑)。この5年ぐらいでいろいろなお仕事、案件が重なってきましたので、経験によって育った面もあるのだと思います。

-在宅テープ起こしのいいところを教えてください。

私としては、「入力が得意」なところを生かせたのが魅力ですね。最初のころは「言葉を文字にする」という作業が仕事になるというのが面白く、どんどん吸収してもいたので、最初の2、3年は仕事が終わったらその合間に勉強もしていたぐらいです。

それから少し大変ではありますが、育児・家事が両立できるところ。私はちゃんとご飯を作りたいタイプだったので、家庭をコントロールしながら仕事ができるのがとても魅力でした。外に出ていく仕事だと郊外は家の周辺で仕事が見つからない。子どもに何かあったときに実家が離れているので預けることができない。主人もその時は東京に仕事で通っていたので家に居ない。選択すると家で仕事をするのが一番良かったのです。「家に居なければいけない状況」でもできる仕事であるのがいいですね。

子どもがインフルエンザでも、親の介護があり家に居なくてはいけなくてもできる仕事ですし、例えば昼間授業参観にいったら夜仕事するなど、多少調節ができますよね。通勤時間や外出の準備の時間が無い分、その時間を家事に充てることもできるのが魅力です。

-逆に、テープ起こしの仕事で大変なところはどういうところでしょうか。

いいところの裏返しではありますが、長時間の座り仕事ですので体調管理に気を付けないといけないところですね。私にも肩こり、頭痛の次には血行が悪くなってしまう症状がでましたので、今は意識して歩く時間をつくったりストレッチしたりしています。

「外に出ないでできる仕事」なので身だしなみがよろしくないこともありますので(笑)、なるべく一度外に出て動くように心がけて。原稿も粗くなって精度が落ちてしまう恐れがあるので、今は体調と相談しながら仕事をするようにしています。

普通に過ごしていたら、まず聞くことができないような内容や自分が選んで聞かないような話を聞いたりすることがあるので、興味の幅が広がったり知見が広がるところがあるので作業は好きですね。ただ孤独な作業ですので、うまく自分をコントロールする必要があると思います。

-当社でお仕事を続けていただいている理由についてお聞かせください。

この仕事は東京反訳さんで言えば、定常的に稼ぐことができますよね。仕事に繁閑があると聞いていますが、実際に仕事が減るのは4月と9月くらいでしょうか。この5年くらいはそれほど暇な時期はなくやらせていただいています。

それからスタッフの入れ替わりが激しくないところがいいです。皆さん長いですよね。長くやっているとスタッフさんの顔が見えてきて、忘年会や研修会で「久しぶり」みたいな感じになります。ただここ2、3年で会社が大きくなられたので、新しいスタッフさんが増えてなかなか顔と名前が一致しないかな。

-当社スタッフとも交流があるのですね。

忘年会や研修会など、リアルで会う場面はそれはそれでいいですよね。忘年会で吉田社長にお話しした個人的なことを1年後に覚えていて気遣ってくれたり。そんなことが2回ぐらいあって、いたく感動しましたね。本当に社長のお人柄が伺えます。孤独で仕事をしているなかで、随所にそういうイベントがあることがうれしいですね。

これから

-今後もテープ起こしの仕事を続けていかれますか。

はい。今後も続けていけるようにレベルを上げていきたいと思っています。若いときのようには無理が利かなくなってくるので、その分をカバーできるように自分のやり方などレベルを上げて工夫していかないといけない。続けていけるように工夫して努力していきたいと考えています。

恐らく上手な人は打ち込む時に同時に校正できたりするし、単語登録などの工夫を私以上にもっとしているのだろうと思うのですよね。校正の時間なども短縮できるように工夫していきながら続けていきたいと思っています。それこそ先ほどの103万円の壁を超えて160万円を目指すのであれば、校正もできるくらい完璧になりたいと思います。納品原稿のチェックとフィードバックをいただいて、レベルが上げられるとうれしいです。それで今後も続けていきたい。

先日始まった「音声起こし技能テスト」も受けて、今の自分がどのくらいできているのか判断してもらいたいと思っています。

-これからリライターを始めようとお考えの方に、一言メッセージをお願いいたします。

よく気が付く人は向いているお仕事だと思います。ただ孤独な仕事ではありますし、暗い話だと気持ちが重くなったりもしますので、続けられる工夫をしながら。自分でうまく気分転換できる方法などを持ちながらやると続いていきます。

とりあえず、晴れていればふとんが干せますよ(笑)。

東京反訳スタッフより

今回は大変お忙しい中インタビューのお時間をいただき誠にありがとうございます。またリライターさんとして生の貴重なご意見をいただきましたこと、厚く御礼申し上げます。S.I.さまが何年続けられても飽くなき向上心を持たれていること、心より敬服いたしました。今後も皆さまが誇りを持って仕事をしやすい環境を整えてまいりますので、引き続き変わらぬご支援のほどよろしくお願いいたします。

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